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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)1097号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山本敏雄の上告理由は、本判決末尾添付の別紙記載のとおりである。

右上告理由第一点について。

形成の訴は、法律に規定のある場合に限つて許される訴であるから、法律の規定する要件を充たす場合には訴の利益の存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により右利益を欠くに至る場合がないわけではない(当裁判所昭和二七年(オ)第一一五〇号、同二八年一二月二三日大法廷判決、民事判例集七巻一三号一五六一頁参照)。株主以外の者に新株引受権を与えるための株主総会特別決議につき決議取消の訴が係属する間に、右決議に基き新株の発行が行われてしまつた本件の如きもまたこの場合にあたると解すべきである。そして原判決が本件株主総会の決議取消の請求につき訴の利益を欠くものとして説示するところは、すべて是認できる。

論旨は、独自の見解を主張するものであつて、採用し難い。(引用の各判例はいずれも新株発行に関するものではなく、本件に適切でない。)

同第二点について。

しかし、新株発行前、その発行の差止の訴およびこれを本案とする仮処分申請が許されている以上、右決議取消の訴が所論のように常に却下の運命を免れないものとはいい難く、これがため株主の基本的権益が失われるおそれがあるとも認められない。論旨は理由がない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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